セス・ゴーディン『「紫の牛」を売れ! 』

「紫の牛」を売れ!

「紫の牛」を売れ!

長いこと積ん読だったのですがようやく読みました。マーケティングの定番書ですね。
タイトルにある「紫の牛」というのは、マーケティングの3つのPだとか5つのPだとか8つのPだとか、とにかくPで始まる大事なもの(PriceとかProductとかPromotionとかPublisityとかその他もろもろ)に、付け加えるべきもので、Purple Cowだそうです。なんじゃそりゃという感じだが、要するに茶色とか白黒の牛はどこにでもあるしあなたが売っていたとしても誰も気にとめないが、紫の牛だったら目立つしそれが必要な人は必ずあなたから買ってくれるだろう、ということらしい。
これだけ製品があふれている世の中では、一般消費者全体に対して宣伝を行うのは無駄である。会社や製品が存在感を持つためには、常識外れなことをやって目立たないといけないし、少数でも先駆的利用者を熱狂的に惹きつけられればそれでいい、ということがたくさんの事例とともにこれでもかこれでもかと示される。2004年の本ですが、いま書いていたら絶対にiPodiPhoneのことが入っていたでしょうね。
こういう話はいまとなってはいろんな本や人からよく聞かれるようになってしまったとので常識となっている感がありますが、ほとんど元祖である本書ではさりげなく紹介されるデータがとても説得力を持ってます。現代の非常に価値の高いブランドのうち、マスメディアの過剰利用によってその価値を上げたと言えるのは7%だけ、とか言われるととてもすっきりする。
週に2回以上食べない方がいいと発表して逆に売上げが上がったフランスのマクドナルドの例なんかも面白いです。迎合したり騙したりといったことは本来の意味のマーケティングというものには無用のものなのでしょう。同じマクドナルドでも国内で最近耳にした話題なんかとはだいぶ趣きが違う。
最近読んだ『企業戦略としてのデザイン』には「デザイナはマーケティングを学べ」と主張されていたのですが、本書で著者は「マーケッターはデザインを学べ」と説いていて、これが見事に対応していますね。やはりその両者が融合していくところが面白いということか。