『自動車産業の終焉』

自動車産業の終焉

自動車産業の終焉

イアン・カーソン/ヴィジェイ・V・ヴェイティーズワラン著、黒輪篤嗣訳。とある集まりで実際にビジネス書の制作に関わっておられるベテランの方から薦めて頂いたので読みました。もとはEconimistの記事だったらしい。
車の両輪のように互いに依存しながら今日まで世界を支配してきたと言っていい「自動車」と「石油」の両業界をめぐって、政治、経済、エンジニアリング、環境問題などの各視点から詳細かつ網羅的に解説しており、現在は既にこの両業界の共闘による支配が揺らぎつつあるというのが基調になっています。
自動車産業と石油産業は互いに依存し過ぎていたため、例えばハイブリッドカーの開発や石油代替燃料への対応などが頭から抑えつけられた格好になっており、それが米ビッグ3の凋落やトヨタの台頭を招いたとしています。そもそも自動車産業の成長初期に内燃機関エンジンが採用されたことそのものが政治の結果であるなどといった記述は刺激的。
シリコンバレーの次世代カーベンチャーなどもいくつか紹介され、ビノド・コースラなどこの日記の読者にはおなじみの人物も登場します。全体的に非常に読み応えがあっておもしろかった。
とはいえ邦題タイトルの付け方に難あり。本書の内容は非常に冷静な現状分析であり、すぐに終焉が来るというような終末論的な雰囲気は全くない。