吉原真里『ドット・コム・ラヴァーズ ネットで出会うアメリカの女と男』

これはすごい本。すごすぎる。現役大学教授の体験型ドキュメンタリで、match.comからお金もらってもいいんじゃないかと思うような生々しい、けれど楽しい話が満載。そしてそれを通して現代のアメリカ文化についてのある一面を克明に知ることができる。
ハワイ大学教授の職にある著者が一年間のサバティカルでニューヨークに滞在した際にいわゆる「出会い系」の雄であるmatch.comに登録する。そのことを同僚に告白調に報告したら、そんなことは誰でもやってるからたいしたことではないというようなことを言われ拍子抜けしたりするのだが、ともかくその後、match.comを通じて出会った趣味の合った男性達とのデートの様子を人文系の学者らしい分析的な筆致でセキララに描く。
登場する男性は名前こそ仮名になっているが、実際に本当にネットがきっかけでお付き合いした人たちで、食事やコンサートや会話の様子だけでなく、お互いの家に行ったりベッドに入ったり入らなかったりといったことまでちゃんと書いてある。その数10人を楽に超え、中にはかなり真剣な付き合いをした人も含まれている。
著者のサイト上でのプロフィール(相当に作り込まれている)をちゃんと読みこなして、人文系の大学教授を付き合おうと連絡を送ってくる男性たちは皆それぞれに魅力的に描かれていて、デート中の会話なども相当に知的で密度が高そうでうらやましくなる。こういう出会いが有り得るなら有料会員になって利用してみようかと半ば本気うっかり思ってしまうくらい興味を惹かれてしまった。ある意味必読。
追記: 著者によるそのものずばりのタイトルがついた『Dot Com Lovers』なる日本語のblogを発見。

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著者は日本語の一般書としては、本書と同じ中公新書から既に2冊本を出していて、本書が3冊目。うち1冊は私も以前読んでいました。他に英語の専門書がいくつかある。