田口久美子『書店風雲録』

書店風雲録 (ちくま文庫)

書店風雲録 (ちくま文庫)

これ、本の雑誌社から出てたハードカバーの元本も買ってたしそのあとの『書店繁盛記』も買ってあったんだけど読んでなかったのです。読まないうちに文庫が出てしまったといういつものパターン。だけど、にじむさんが力の入った感想レビューを書いてるのを見て文庫も買ってしまったのでやっと読みました。
いやーすごい。これはすごい。なんでもっと早く読まなかったんだろう。
リブロは75年にスタートして(私と同い年だ)、80年代後半までひとつの文化の担い手の自負があった。自分はその跡地しか知らないが、たとえばいま私たちが書店に行って何気なく目にする店頭POPや、目利きの店員さんによる「棚を作る」発想というのは昔からあったものではなく、この本が語っているリブロとともにあったその時代に文化を作る発想であみ出されたものだったのか。
私にとってはリブロは全くリアルタイムの現象ではなく、池袋店にはじめて行ったのは東京に出てきた93年だし、その後日常的に使う書店にはなったのは板橋に引越してからで、すぐに日販傘下になったのだった。文化の西武的感覚は雑誌の中の出来事で、実感を持ったことはない。だから書かれていることは驚きの連続だし、ピースがバシバシはまっていく感じがする。いま私がわりと好きな永江朗保坂和志などが西武書籍売場出身者として本書の印象的な登場人物になっている。
読み終わってみると、当時のリブロは私がいま理解できる言葉で説明するならスタートアップなんだな。エンジェルは堤清二(乱暴な比喩なのでツッコまないでね)。成長して、30年経ったいまの状況は本来のexit pathじゃないんだろうけど、時代は作ったよね、という。