ラメズ・ナム著, 西尾香苗訳『超人類へ! バイオとサイボーグ技術がひらく衝撃の近未来社会』

超人類へ! バイオとサイボーグ技術がひらく衝撃の近未来社会

超人類へ! バイオとサイボーグ技術がひらく衝撃の近未来社会

これはすごい。衝撃の未来像。Evolving Humanの新たな姿という感じがする。遺伝子やサイバネティクスの過去の成果から最新の研究までをフルに活用して、もし人間がこれらの技術によってよりよく生きることを積極的に指向したら、という場合のかなりラジカルかつ説得的なシナリオを描き出します。そういった試みの結果、変化した人類を原題で"More than human"と呼んでいる。
よくある生命倫理的批判を退けて、レオン・カスやフランシス・フクヤマなど慎重派の主張に真っ向から異を唱えます。それはもう気持ちよく。さらに著者は、人間を改良するさまざまな手法を積極的に推進することにより量産効果が働き、技術が大衆化することで格差の解消につながるのでそれを目指すべき、そういった努力が是非とも必要だ、と説きます。この部分がものすごいラジカル。かなり興奮しました。あと、現代の研究をばしばしreferするのでついていくのがけっこうタイヘン。読むのは体力要りました。でもそれだけの価値はある。著者の意見には立場的に賛成でも反対でもどちらであるかに関わらずおもしろいし勉強になると思う。
この日記で触れたことがあるかどうか思い出せないんだけど、2000年にBill Joyが書いた"Why the future doesn't need us."なんかとはまったく違った未来を想像することになります。どっちも読むべし。