ジェフ・ホーキンス『考える脳 考えるコンピューター』

考える脳 考えるコンピューター

考える脳 考えるコンピューター

読むと泣く。著者はPalmやHandSpringのファウンダーなので、我々は多かれ少なかれ必ず影響を受けている。
脳に魅せられて脳科学を究めるべく大学院に進学するが、既存の理論の延長で研究を行うことに限界を感じて一旦はビジネスの世界に。そしてついに、ビジネスで得た資金を利用して脳を専門的に研究する機関を設立してしまう。
本書では、そこに至るまでの足跡を振り返り、さらに彼の考える理論の枠組みとそれによって実現する未来についても解説している。
脳の機能を解説するために挿入されている「ジグソーパズルの比喩」が秀逸で、あらゆる理系の学問というものがこんな感じなんだよなーとうなってしまったよ。そしてそういった混乱を一刀両断するようなパラダイムシフトはなかなか受け入れられない。しかしこの人のアプローチはそういった制限をつきやぶってしまうように思う。あたかもベンチャー企業がそうするように、既存の枠組を壊してしまうようなイノベーションを重視して研究を行うのである。


ところでこの本、5/15の朝日新聞の書評で天外伺朗が取り上げていたのだが、これがどこが書評なんだよ! ていう内容で、ハンドヘルドコンピュータを作ってから脳を研究するのって僕と同じだね、でもビジネス的にはきみの方が成功しちゃったけど、僕の方がどっちも早く手をつけてるよ、早過ぎて認められなかったみたい、ハハハ、みたいな。おいおい。書評で自画自賛すな。しかもこの本の良さはちっとも伝わってない。読むと学問の力と今後への期待とでわくわくさせられるのだ。決っして単なるアイデア紹介本ではない。というか書評委員を見直した方がいいと思う。
翻訳では内容を再構成されており、例えば原書(ISBN:0805074562)にある文献リストなどが削除されている(学術的な本に対してそういうことをする感覚が理解できない)。が、邦訳出版元のサポートページからPDFで入手可能。原書のサポートページもある。