恩田陸『小説以外』

小説以外

小説以外

初エッセイ集。いろんなところで発表した短い文章のよせ集め。恩田陸をデビュー作の『六番目の小夜子』からwatchしている私としては見逃がせないのである。

というより恩田陸についてはデビュー作と2作目『球形の季節』によって私の中で勝手にノスタルジー作家というイメージが強烈に出来上がってしまっていて、他に代替のきかない貴重な作家さんという位置付けなのだ。が、そのイメージのままで様々に期待をしてしまうものだから、特に専業作家になって以降の多作化傾向とその結果の作品路線にちょっと複雑な思いというか、まあぶっちゃけて言えば「うすまった」感が淡い胸の痛みとともにあるのであった。なので最近はやや警戒して出てもすぐに読まないことが多くなっていたのに、ここにきて正統派恩田陸路線(なんだそりゃ)らしい『夜のピクニック』が第二回本屋大賞でまたブレイク、私は当然買ったと思い込んでたんだけどなんか見当たらないし、そんなんだからまだ読んでない、というなんかフクザツなキモチ。
とかなんとかいう感じの葛藤がある中、本書をざざっと読んだらそういった量産体制*1も、なんか許せるようなかえってありがたかったようなそんな気分になってきました。というわけで同じような状態の人にはオススメ。
どうでもいいことだが、夜ピクamazonの書影まで本屋大賞オビになっている。元オビ信仰者の気持ちが少しわかってしまった。

*1:これを私の周囲では「長野まゆみ化する」という。はなはだ失礼なネーミングであるような気がするが、わかる人にはわかっていただけるものと思う。