野村進『千年、働いてきました―老舗企業大国ニッポン』

TBSラジオのストリーム(きいたのはそのPodcast)で、永江朗さんが取り上げていたので読んでみました。日本には百年以上続いている「老舗企業」がたくさんあって、意外なことにこれが他のアジア諸国にはほとんど見当たらないらしい。それを日本の「職人の文化」、華人を中心としたその他の「商人の文化」と呼んで、職人の文化を担う数々の老舗企業に取材しながら現代にどう連なっているかを引き出してます。といっても伝統を大切にしなくてはいけません、とかそういう保護主義的なものではぜんぜんなく、たとえば金沢の前田藩ゆかりの金属箔の技術がいまや携帯電話の基板に不可欠になっていたり、酒造りの技術がアトピー治療の特効薬を生んだりなど、現代になっても老舗の職人の技術が常に進化しながら活かされていく様子が次々と出てきます。このへんに長寿の秘訣がある。
日本最古の現存企業(創業は578年、飛鳥時代!)である「金剛組」が倒産の危機に陥った際になんとかその事業と名前を存続させて残そうと地元企業などの有志が奮闘し、現在は再建途上にあるようです(このへんちょっと経緯がよくわからず)。こういう千年以上続いてきた老舗企業というのも、そのときそのときで時代に合わせて少しずつ姿を変えながら続いてきたのだけど、根底には伝統があって、その伝統の火を消してはいけないという思いが人を動かしてきたわけです。
日本にはこういった老舗企業で百年続いてるようなのが10万社以上あるそうです。日頃からほとんどが創業1,2年、10年続けば歴史的企業、みたいな業界にいるので、百年だの千年だの言われるとあまりの違いにクラクラしてくるけど、我々の業界もいつもと違う時間の単位で考えてみると面白いだろうな。1万年後のコンピュータを考えていたダニエル・ヒリスとか、彼のアイデアを実現するモノを作るのはこういう「老舗」なのかも知れない。