西林克彦『わかったつもり 読解力がつかない本当の原因』光文社新書

わかったつもり 読解力がつかない本当の原因 (光文社新書)

わかったつもり 読解力がつかない本当の原因 (光文社新書)

かなり興奮。すごい本を読んでしまったかも知れない。この著者の『間違いだらけの学習論―なぜ勉強が身につかないか』を学部の一般教養のなんかの授業で知って、それなりにショックを受けたことがあったために名前はよく覚えていた。なので本屋さんで見かけて手にとったら。最初の数ページを立ち読みしたら止まらなくなったので仕方なく買ってしまってあとは一気。いま、読書自粛中でなるべく買わないようにしてるんだけど抵抗できなかった。

文章を読んで「わかった」と思う。その「わかった」いうのが時に不十分なであったり間違っていたりする可能性がままあるということを、小学校の教科書に載っている文章を実際に読むことによって示して行きます。
日本語を読むことが出来る人であっても、文脈やステレオタイプによって実際には不十分な理解であるにも関らず理解していると思い込んでしまう「わかったつもり」状態に陥ることがあるということが、実際にトラップにはまって体感できるのでなかなかショックです。
「わからない」ことはすぐに自覚できるために対策できるのだけど、「わかった」状態というのは一種の安定状態でそれ以上の理解を求めようという意識が起こらない。そのまま不十分な理解で安心してしまう危険性をはらんでいます。読解を妨げている「わかったつもり」状態が起こる事情やその対策が、実験データによって細かく解説されています。
まさに「わかったつもり」になりがちな私には相当おそろしい内容でした。


「わかる」のしくみ―「わかったつもり」からの脱出』も同内容の本らしいのでこれも読んでみようかなあ。Amazonがしきりにオススメしてくる。なんか最近、光文社新書がかなり調子いいような気がする。