ロバート・カーソン『46年目の光 視力を取り戻した男の奇跡の人生』

46年目の光―視力を取り戻した男の奇跡の人生

46年目の光―視力を取り戻した男の奇跡の人生

ものすごい本。めちゃオススメなので読んでください。
幼少時に失明したマイク・メイという男性が本書の主人公で、著者のロバート・カーソンが彼に長期間付き添って膨大なインタヴューをしたノンフィクション。
マイク・メイは10才までの間に何人もの名眼科医を渡り歩き、何度も角膜移植を試みたが快復することはなかった。ところが46才のある日、新しい視床幹細胞移植という方法により視力を取り戻せる可能性があると伝えられる。メイは迷った末にこれを受ける決意をする。メイの生い立ちや彼の半生記を軸に、脳科学の最前線などを絡めて話がすすんでいきます。
このメイという人は生れもった性格がものすごくアクティブなようで、およそ視覚障害者とは考えられない、全力でものごとに(文字通りに)ぶちあたってゆく人生を歩んでいる。本の前半ではそういったメイの前向きな精神と行動力、それによって起こるさまざまな事件、例えば呼ばれていないパラリンピックに勝手に乗り込んでスキーで滑って降りてきたり、というのが中心です。
ところが、手術で視力を取り戻してからがまたすごい。あまりにも長期間、視力がないことに慣れてしまった彼の脳は、視力をうまく使いこなすことが出来ないのだ。例えば彼には、水平線に向かっていく道路が一点に集まっているように思えない。どこまでも平行に見える。雑誌の折畳まれたピンナップを見ると、女の人の体に折り目が付いているように見える。
しかしメイはここでも果敢に挑戦し、思うように扱えない視力を再び手放したり邪魔もの扱いしたりはしない。視力は思ったよりもずっとすごいものだと認めつつ、自分の獲得した世界を精一杯たのしもうとするのです。ここから先は実際に本を読んでもらった方がいいでしょう。もう感動的な内容てんこ盛りです。46年間目が見えなかった男性が当然いちばんに見たいものは何か? とかいうところなんか特にすごい。
そんな感じでとにかくオススメ。読んでください。勢いあまって2回も「読んでください」と書いてしまった。