マイケル・ゲイツ・ギル『ラテに感謝! 転落エリートの私を救った世界最高の仕事』

ラテに感謝! How Starbucks Saved My Life―転落エリートの私を救った世界最高の仕事

ラテに感謝! How Starbucks Saved My Life―転落エリートの私を救った世界最高の仕事

原題は『How Starbucks Saved My Life』で、渡辺千賀さんの書評を読んで注目していた本ですが、いつのまにか翻訳が出版されていました。翻訳は月沢李歌子さん。早速読んだんですが、これが前評判通りめちゃめちゃ素晴しい!!! 後半はもうページをめくるたびに涙涙です。ものすごくオススメ。すぐ買え! すぐ読め!!
内容(全て実話です)について少し。主人公のマイケルは裕福な家で育ち、イェール大学を出て卒業時にはスカル&ボーンズにも誘われたような優秀な人(もちろん白人)。大手広告代理店に就職し、仕事では自他ともに認めるエリートとして充実した日々を過ごす。ところが勤続35年のある日、信頼していた年下の幹部から突然クビを言い渡される。その後、自分で広告会社を起こすがうまくいかず、仕事もなく、いろいろあってプライベートもズタズタで、家族の保険も払えず、破産寸前になっていた。
そんなある日、Starbucksで呆然としていたところに突然「仕事が欲しいの?」と声をかけられて、うっかり「はい」とこたえてしまう。相手は若い黒人女性。近くのスターバックスのマネージャだった。63才にして年下の黒人女性と一緒に働くことになってしまったのだ。もちろん全て未経験。そこからがすごい。
トイレ掃除からはじまって商品の棚出し、コーヒーを淹れたり、当り前だけどふつうのスタバの仕事。マイケルは広告業界出身らしく接客は得意なのだがレジ打ちはめちゃくちゃ苦手で、彼はディスクレシア(識字障害)だったという過去まで思い出してしまう。だがそれでも彼にとっては仕事がある! ということがそれだけで何より素晴しく感じられるので、苦手なレジ打ちもここでの仕事を失いたくないばかりにがんばってしまったりする。
広告の仕事(J.Walter Thompsonだった)では得られなかった充実感と同僚やお客さんの温かさにふれて、すぐにStarbucksとそこでの仕事を愛するようになってゆく。
そこからは、自分にとって仕事とはなんなのか、仕事とは自分の生活にとってどういう存在なのか、人生において大事な仕事を持てるというのはどんなことなのか、そういうメッセージが詰まっているのがあふれ出てくるのです。
私もスタバには客として通いつめているのであの独特のカルチャーがわかる。お店は地域のお客さんをとても大事にしてくれるし、店員さんとのお話しはたのしい。日本ではやや控えめだけど、アメリカのStarbucksの店員さんは本当にfriendlyだ。マイケルがそのカルチャーを心から大事に思っているのがよく伝わってくる。何度も泣きそうになったよ..。
これらは全て実話で、マイケルはいまでもStarbucksの店頭に立って接客をしているそうだ。そしてこの話はトム・ハンクスが映画化権を買ったそうで、来年公開で準備が進んでいるそうだ。めちゃぴったり!! 想像するだけでわくわくしてくる。
というわけで珍しく長く感想を書いてしまったけど、ものすごくオススメです。映画も劇場公開されたらすぐに見に行きたいと思います。