田中秀臣『雇用大崩壊 失業率10%時代の到来』

雇用大崩壊―失業率10%時代の到来 (生活人新書)

雇用大崩壊―失業率10%時代の到来 (生活人新書)

ものすごく乱暴にまとめると、若者の非正規雇用がどうとか派遣切りがどうとか言ってる雇用問題というのは、要するに経済的な問題であって、経済政策やもっと積極的には金融政策とセットで考えないと意味がない、この不景気なときに雇用対策単体で議論してもしょうがない、というようなことを前半書いて、後半はだから金融政策重要だよね、という期待通りのリフレ派の主張になる。
例えば今は悪のように言われている年功序列で終身雇用の賃金体系も企業への忠誠を得るための策としては効率的で、かつ年数%の昇給もインフレ下では相対的な負担は小さい。これが金利が限りなく0%に近い状況では定時昇給も負担になる。要するにいま問題になっている企業の危機は全て景気が悪いからなのだ。
他には、若者がより高待遇を目指して教育訓練に投資することをせず、低賃金の非正規労働に身をやつしているのは双曲割引によるものだとか(私自身はそれはちょっと直接あてはまらないんじゃないか思うが)書いてあって面白い。
ただ、結論として金融政策に原因を求めているので、個人で失業率10%時代に立ち向う術を知りたいと思っても、そんなものはない、と言われてるようであんまり明るい気分にならないという。余裕のない人は読まなくていいかも..。これも双曲割引かな。