野口悠紀雄『世界経済危機 日本の罪と罰』
- 作者: 野口悠紀雄
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2008/12/12
- メディア: 単行本
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金融危機のきっかけとなったサブプライムローンは米国の住宅バブルを背景としているが、そのバブルは「輸出立国」となっていた日本からの過大な資金流入により起こった。日本は90年代後半から景気が徐々に回復しているかのように言われていたが、現実には逆で、緩慢な形で「隠れたバブル」が進行し、それが原因となってトヨタ、ソニーなど輸出産業の利益の源泉となっていたと言う。急激な円高はそのバブルが弾けたためだ。これが戻ることは最早ない、というようなことが私のような経済の初心者にでもわかるように非常に論理的かつ易しく解説されている。
そもそも9月のリーマンブラザーズの破綻を受けて経済危機を解説する本がなぜこれほどはやく出版出来るのか? ここがこの著者のすごいところだ。要するに、以前からの主張を繰り返しているだけなのだ。これほど主張が一貫している、ぶれがないということは、それだけである程度の理論的な正しさを示していると思われる。
これ以前の「超」整理日誌を読み返してみると本当に同じことが書いてあるのがそら恐しい。そして「モノづくり幻想」にとらわれた日本には処方箋は無いように読める。そんな中でもわずかながら著者が光を当てているのがGoogleに代表されるシリコンバレーの新しい企業たちである。ここからは、日本だとか米国だとか中国だとかいった国による違いを超えて、新世代と旧世代という対比の方が重要であるということが見て取れる。そして日本には本物の新世代企業は無いに等しい。ビッグ3に代表される旧世代企業は退場する他ないとすれば、日本の製造業も然りであろう。
かように読後感は鬱々としたものになるが、それでも危機を乗り越えたいと考える全ての人に読んでもらいたい本だ。いま何が起こっているのか? に対する明確な解説を探している人にもオススメする。