小林雅一『神々の「Web3.0」』

神々の「Web3.0」 (光文社ペーパーバックス)

神々の「Web3.0」 (光文社ペーパーバックス)

タイトルから上滑りしてる痛々しい本だと予想して眺めてみたら意外としっかりしてて面白かったので通して読んでみました。現状のソーシャルメディア、デジタルコンテンツをめぐる新旧コンテンツの攻防、検索エンジンの未来、日米双方の携帯電話、仮想世界などを扱って、流行をまんべんなく書いています。実際にシリコンバレーでインタヴューした著名人の話もたくさん出てきます。
ただもちろん、扱うトピックが広い範囲にわたっているため、そのひとつひとつについての議論はややさわりだけという感がないでもない。悪いというわけではなくて、そういう種類の本、ということですね。
ところで映像産業について書いた章の最後の締め括りとして出てくるのがJustin.tvだったりするのだが、その紹介はこんな記述になっている。

同社創業者の1人、ジャスティン・カンJustin Kan氏は2005年にイェール大学を卒業後、「キコ」Kikoと呼ばれるオンライン・カレンダーを開発して注目を浴びた。しかしキコは、その後登場したグーグル・カレンダーGoogle Calendarに市場シェアを奪われてしまった。そこでカン氏はキコをイーベイに25万ドルで売却。このお金をエンジェル(個人投資家)からの出資金を元手に、2007年4月、大学の同級生2人とともにジャスティンTVを設立した。

まあだいたい正しいんだけど、JustinたちがKikoを売った相手はeBayじゃないぞー。まあ単なるtypoかも知れませんが、ほんとはeBay売った、ですね。実際の買い手はカナダのtucowsだった。このへんの事情はこの日記の読者はおぼえておられるかも知れない。わからない人はこのへんとかこのへんを見てください。
というような感じで日本だとUstream.tvの方がややポピュラーだけどJustin.tvだったり、ところどころ選択が渋めな気もしてともかくわりと面白く読めた。タイトルは損してると思う。そのへんの自覚があることは本の最後の方にも書いてありましたが。