ドナ・フェン『アルファドッグ・カンパニー』

アルファドッグ・カンパニー (講談社BIZ)

アルファドッグ・カンパニー (講談社BIZ)

読みました。さくさく読めておもしろかった。企業の成功事例研究本なんだけど、超大企業になっちゃったところの派手なサクセスストーリではなく、言ってみれば地道に経営を続けてきた結果として傑出した存在になっている小さな会社7社について詳細をレポートしています。
「アルファドッグ」とは訳者によると「自他ともに認める群れの先頭、最強の」のことだそうです。本書では数ある中小企業の中から、アメリカに昔からある伝統的な業界で、自己資金かそれに近い調達法で経営されていて、イノベーターとして業界内で突出した評判を得ており、そこが従業員にとっても非常に働きやすい職場になっている、そのような存在感のある企業を選び出し、それを群れの先頭を走るアルファドッグになぞらえています。
アルファドッグたちは競合の大企業が真似を出来ないことをやってのけます。買った自転車を生涯永久保障でタダで修理してあげる自転車店だとか、地元密着かつ奇想天外なサービスで客をファンにしてしまうアイスクリーム店だとか、Walmartや中国との競争から逃れて超高品質にこだわる靴下メーカーとか、様々ですが、言ってみればありふれた、昔からなじみのあるこれらの業界でイノベーションを巻き起こして先頭をつっ走る。その姿は顧客はもとより従業員にも熱狂を巻き起こします。というか会社のスタッフが自ら夢中になって変革を追及していないとこういう企業は生まれないのでしょうね。
日本とアメリカでは商習慣も企業文化も違っていますが、それでも数多ある個人商店、とりわけ郊外に週末の客を取られてシャッターを閉じている商店街なんかが大資本に立ち向かうためのヒントがあふれていると思います。読んでる最中に私はローテクもいいよなあ、なんて思っていました。