山本弘『“環境問題のウソ”のウソ』

“環境問題のウソ”のウソ

“環境問題のウソ”のウソ

大変に面白かった。まあと学会会長の本としては笑いの要素が少ない気はするけど。でもすばらし。要するに情報リテラシーの本なのです。環境問題についても知見が得られるけど、それよりも物事を批判的に見る目とか、情報の正しさを見抜く力とか、そういったことについて非常に真面目に語ってくれている本だと思う。
『環ウソ』本の武田教授の主張は一見ショッキングなものだ。しかしその内容を丹念に情報ソースを遡って調べて行くと、データが間違っていたり、恣意的な情報の取捨選択が行われていたりといったことが次々とわかってくる。著者が疑問を持ってそれを調べつつ、武田教授本人にも質問したりして解明して行く様子がつづられています。このあたりは『あったんだ論』なんかと同じように痛快に読めるけど、本をついつい受け流しながら読んでしまう私としては、かなり身につまされる内容です。
この本の批判は正当なもので、『環ウソ本』2冊についてはぐうのねも出ないほど叩きのめされているんだけど、それでも『環ウソ2』の方にはまだ重要な主張が残っていて、それは京都議定書不平等条約化しているというやつです。これについてはさすがに(根拠とか論理展開はともかく)ウソとは言えないような状態なんだと思いますが、そのせいか具体的に反論はされていない。ただ京都はともかくとしても環境についてどう考えて行くべきなのか? ということについて本書の後半で著者の考え方が述べられていて、そこではやはり武田教授と著者は大きくスタンスが異なっているのがわかります。
また、私にとっても著者の見解の中で考え方が大きく違うなあと思うところが1点ありましたが、これについては別の機会にあとで書くことにしよう。
ところで、本書の書名は『“環境問題のウソ”のウソ』なんだけど、批判の対象になっている本は『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』である。なんでこうなったんだろう? しかもまさにそのものずばり『環境問題のウソ』というタイトルの本も池田清彦さんがちくまプリマー新書から出ているからややこしい。まあこっちの本はこっちの本で、本書でも取り上げられています。しかしなぜ『"環境問題はなぜウソがまかり通るのか"のウソ』というタイトルにしなかったんだろう。