米原万里『オリガ・モリソヴナの反語法』

オリガ・モリソヴナの反語法

オリガ・モリソヴナの反語法

年末年始を利用した積ん読処理の一環です。
子供時代にプラハソビエト大使館附属小学校に通っていて、ダンサーになることを志すが夢破れ、今はロシア語の翻訳者をしているシーマチカこと弘世志摩が主人公。ソビエト学校での想い出深いダンス教師オリガ・モリソヴナの反語法とは、人を褒め殺しにするという特徴的な罵倒法のことだった。
舞台は1990年、志摩がオリガ・モリソヴナの想い出を辿る謎解きの旅にロシアに来て当時の資料を紐解きはじめたときから、ロシアやソ連市民、周辺諸国の人々が体験した数奇な運命と、一時代の激動が次々と明らかになり..。
日本人の我々には想像を絶するような話でも同時代をその場所で生き、翻弄された人々にとってはそれが苛酷な現実そのもの、そして小学生時代をそこで過ごして接点を持っている志摩はそんな我々読者と舞台であるその時代、その場所との橋渡し役です。
ぐいぐい引き込まれて一気に読みました。これはもっと早く読んでおくべきだったなあ。文庫が出てから2年、著者が亡くなられてからもう1年半。ほとんど全てのエッセィを読んでいたのにこれだけは積んだままになっていたのはひとえにタイミングの問題。素晴しい。そして著者はもうこの世にいないのが惜しい。
これから読むなら文庫の方が入手しやすいでしょう。
オリガ・モリソヴナの反語法 (集英社文庫)

オリガ・モリソヴナの反語法 (集英社文庫)