ニコラス・サリバン『グラミンフォンという奇跡』

グラミンフォンという奇跡 「つながり」から始まるグローバル経済の大転換 [DIPシリーズ]

グラミンフォンという奇跡 「つながり」から始まるグローバル経済の大転換 [DIPシリーズ]

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これはすごい。わくわくする。何億ドルの援助よりも、一本の電話によって世界が変わる。「繋がる」ことは即ち生産性なのである、という事実に戦慄する。
2006年のノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌスグラミン銀行、そのグラミン銀行の名を冠した携帯電話会社を同じく祖国バングラディシュに創業したイクバル・カディーアと彼の作った会社に関するドキュメントです。なぜグラミンフォンという名前なのか? というのは本書を読めばよくわかります。カディーアは電話をビジネスの強力な武器ととらえ、ユヌスがやったのと同じように、貧しい人々に金銭的な援助を与えるのではなく、融資によって仕事を与え、やがては自立してゆくためのツールにしてしまうのです。
我々がいつも何気無く使っている携帯電話も、強力な武器になってしまう。先進国で常に当たり前にそれらに接している人間には、その強力さがわかりません。でも例えば、電話一本で農作物の値段を正しく知ることさえ出来れば、農民は闘う力を手にすることが出来るのです。そんなわずかな情報さえ手に入らないからこそ、貧困が生まれてしまう。
カディーアとユヌスは「ビレッジフォン・プログラム」と呼ぶ新しい仕組みを作り出し、それまで1本の電話もなかった68,000もの村に携帯電話を普及させようとしています。ビレッジフォン・プログラムでは、テレフォンレディと呼ばれる女性たちが1台の携帯電話を購入し、それを時間単位で村人に貸し出します。電話の購入のための資金はグラミン銀行によるマイクロクレジットで提供されます。これは本当に奇跡と呼ぶにふさわしい。
私もそうですがITに関わるものこそ、読んでこの奇跡を認識するとショックを受けると思います。素晴らしい。