佐藤優『自壊する帝国』

自壊する帝国

自壊する帝国

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ものすごい本だった。面白いとかそんな表現では伝えきれないんだけど。
ソ連外交官だった著者が、巨大帝国の崩壊を書きとめた強烈ノンフィクション。時代的には著者が外交官になるきっかけから、その後の著書『国家の罠』の舞台になるちょっと前くらいまでが対象になっていて、機せずして就いた外交官という職業にのめり込んでいきつつ、その過程で日本に稀な超弩級のインテリジェンスに変貌してゆく様を自ら書く。その間に政治と神学が交差しつつ起こるは様々な人物との出会いや別れを小説ばりにドラマチックに描写。息をつく暇もなく一気の読ませる。梅田望夫さんが「青春小説」と呼ぶのがものすごくよくわかる。こんな体験そしていればその後の国策による「罠」も納得である。
読中の疾走感がものすごく、読後にはしばらく何も考えられなくなってしまいそう。著者の思想に感化するかどうかは別としても、この人が体験を書いたものは無条件で読まなければならないだろう、そんな気分が前著以上に強烈にやってきた読書体験であった。