日垣隆『方向音痴の研究』

方向音痴の研究 (WAC BUNKO)

方向音痴の研究 (WAC BUNKO)

TBSラジオサイエンス・サイトーク』書籍化のWACからは3冊目。このシリーズの発刊の経緯などは以前の書籍のところに書いたのでそちらも合わせて参照してください。今回は時代がちょっと戻って、1999年から2000年にかけて収録されたインタヴューを加筆したもので構成されています。登場する5名のゲストのお名前だけ敬称略で列挙すると、石川准、青木清、西脇正治、林秀美、山本利和、となってます。
7年以上も前の対談が下敷きになっているため、いろいろ感慨深い。この著者の私がはじめて読んだ本は『情報の技術』で、これは手元の記憶によると1998年の9月に読んでいるのだけど、その最初のエピソードが『動く地図』というタイトルのカーナビ開発のルポだった。本書の第3話『カーナビ開発秘話』及び4話『デジタル地図革命』はまさにその当事者へのインタヴューです。また、本書第1話の『全盲社会学者が行く』の石川准さんもその『情報の技術』で密着取材していて、その取材時の話などが出てきます。番組はもともとそうやって著者が取材などで知り合った人がたくさん出演されていたのですね。
加筆部分は7年の時を埋めるにはちょっと無理があるような気がする。例えば地図については、当時と現在では無料で使えるGoogle Earthの存在という決定的な差があるわけです。それについて対談部分に会話に挿入するように加筆されていて、いかにも浮いている。これは対談部分とは別に解説みたいな形にして入れるほうがよかったんじゃないかなあ、と思う。
本書は弾さんが指摘しているように対談相手の名前が前面に出ていません。前書きでもインタヴュー集ではなく対談を下敷きにした書き下ろし本という位置付けになっているようです。確かにちょっと不可解なんだけど、それでもずっと前に新潮OH!文庫で出てた初期の分と、去年WACから出てた2冊の、間の時代の分が埋まってゆくのだとしたらうれしいので、とりあえず継続して欲しいです。

関連

本文中で触れた本はこちら。

以下のタイトルで文庫化されている。
情報系 これがニュースだ (文春文庫)

情報系 これがニュースだ (文春文庫)