野里洋『癒しの島、沖縄の真実』

癒しの島、沖縄の真実 [ソフトバンク新書]

癒しの島、沖縄の真実 [ソフトバンク新書]

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素晴しい。オススメ。
著者は石川県出身でありながら、まだ沖縄が「国外」だった時代に沖縄の新聞社である琉球新報に就職し、役員まで歴任した人物。数十年の体験を振り返りながら、戦後の沖縄がたどってきた歴史や文化を語っています。
小渕政権でサミット会場に沖縄が選ばれた経緯には、この著者も在籍していた沖縄文化研究会が少なからず影響していたこと、にもかかわらず、小渕首相本人は急逝したためサミット当日にはその場にいられなかったことなどが印象深く語られて、これはこの著者でなければ書けないことだなあ、という感じ。単なる沖縄文化紹介本とは入り込んでいる深さがちょっと違う。
また、沖縄で時に真剣に議論される独立論について取り上げた第5章「気分は琉球新王国」が面白い。このへんになると好き勝手に書いてる感じで、本土出身の著者もいまやすっかり沖縄の人なのかも、という気分になる。全体的にも戦中・戦後の痛ましい事件なども取り上げつつ悲痛な感じではなく、本土からの移住者も増えているという癒しの島の魅力を充分に伝えています。