河内孝『新聞社 破綻したビジネスモデル』
- 作者: 河内孝
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/03/01
- メディア: 新書
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新聞の構造的問題をひとことで言うと発行部数至上主義の歪みである。売上げの4割が販売経費にあてられていて、そんな業界は他にない。その部数も、各種統計はあるものの公称部数は実態とかけ離れているそうだ。近年、急速に広告費が落ち込んでいて戻っていない。
日本に独特の配達システムとそのための販売店網、部数獲得のための拡張団員などが絡みあって高コスト体質を抜け出せず、配達されない残紙(本来は業界全体で無いことになっている)が年間37万トンが販売店の経営を圧迫し、環境にもダメージを与えている。
著者は毎日新聞が既に「ナイアガラの滝の縁まで来ている」のが周知の事実だという。読売・朝日は既に二強体制で生き残りをはかろうとしているが、それは旧体制の温存に近い。そこで、新聞が業界全体を巻き込んだ改革を遂げるため、販売店も巻き込んだ産経・毎日・中日(東京)の包括的提携による「第三の勢力」作りプランを具体的に示すが、これがかなりアグレッシブ。
また、これも日本に独特な新聞社とテレビとの系列化、メディア・コングロマリット化の歴史が解説されていて、これが 池田信夫さんの『電波利権』を読んだときと同様に私がこの分野に不案内なせいもあるが面白い。電波も新聞も同様の症状により破綻しつつあることがよくわかる。ただ現実に未だ巨額の現金が転がり込むテレビにくらべると新聞の末期は近く、それだけに本書の内容が切実かつ具体的になっているのだろう。私自身も新聞は取っていないので*1新聞離れの一例であるが、今後の変化如何によっては読みたいメディアになるかも知れないな、という感触も持った。