あなたがMacを買わない10の理由

また前口上

去年書いた『あなたがMacを使うべき10の理由』を書いたら、おおむね好評とともに読んでもらえたみたいで(ほんとかー?)うれしい限り。実際あのあとも記事の影響ってわけじゃないと思うけど*1Mac買ってくれた人もたくさんいるし、ますます広まってきているみたいでこれも私設営業の人としてはとてもうれしい。
Macを買うべき理由はあのときからそんなに大きく変わっていないんだけど、あのあと一部の人からは「Macは買わない」とか言われてて、そんな人たちに「なんで? なんで?」って聞いてみてたらそういう人たちの言い分にはいくつか類型があることがわかってきた。そしてそういった「買わない理由」の中には私から見ると解決可能なものも含まれているわけ。
もし些細なことが原因でその人がMacを使えないとしたら、それはその人にとってとても不幸なことだと思う(←とか決めつけるのを妄想といいます)。ゆめゆめゆゆしき事態だといえる。そこで僭越ながら私がこの問題を解決するのを手伝うために、みんなの「Macを買わない理由」に反論してみようと思います(←おせっかい)。読み終わったころにはAmazonApple Storeで1 clickしてるんじゃないかと思います。
あと、そうはいっても書いてみて思ったけどやっぱネガティブオピニオンに対する反応なので主張が後ろ向きというか後手にまわってる感は否めない。もっとポジティブななぜMacがいいと言いたいのか? については去年のやつを読んだりしてください。
(例によって書きかけなので今後もいろいろ変わったりするかも)

Macを買っても職場ではWindowsなんだよね、それにVistaも出たし

まずはこれから。よく聞くんだけど、これは解決可能な問題だ。あるいは、問題設定が間違っている。
最初に根本的に疑問なんだけど、なぜ会社で使っているのと同じコンピュータをあなたが買わないといけないんだろう。慣れてるから? 仕事を持ち帰るから?
自分のために使うのはMacでいいと思う。あなたが自分のためにやることってなんだろう。Power Pointを使ってプレゼンすることかな。そうじゃないだろう。ここを読んでいるほとんどの人にとって重要なのは、メールを読み書きして、Webを見て、Blogを書いて、プログラムを書いて、っていうことだろう。他にも、デジカメで撮った写真を整理したり、音楽を聴いたりっていうのもある。この中には、Windowsじゃなきゃできないことっていうのはたぶんない。特に、会社で使っているWindowsと同じ道具にしなきゃいけない理由はどこにもない。
ちょっと飛躍するけど、あなた自身が買うコンピュータというのは、あなた自身の表現の道具なんだ。あなたはそれに最も適切な道具を選ばなきゃいけない。それにもしあなたが日常的にプレゼンをやるような人であっても、Keynoteを使ったほうがかっこいいと思うよ。
自宅を職場にしたい、それも会社でやっているようなあれやこれやとほとんど同じことをやる場所にしたい、って思っているなら、そのときは仕方ない。でもそういうことは会社でやった方がいいんじゃないかなあ。自分のコンピュータっていうのは、自分のために買うものだよ。
さて、職場と自宅の作業がそんなに切り分けられていない人とかもきっといるよね。すごいワーカホリックの人とか。自分のコンピュータで仕事もしちゃいたい人たちだ。そんな人にも使える奥の手がる。会社でもMacを使えばいいのだ。これについてはここでは詳しく書かないけど(あとで書くかも)。
いままで忘れてた(というか考えもしなかった)けど、もうひとつの可能性があることに気がついた。いま職場とかでWindowsを使ってるとして、新たにMacの使い方をおぼえるのがめんどくさかったり、使いこなせるか不安だったりする人もいるんだね。でもそれなら全く心配いらない。Macは最高に使いやすいし、使っててたのしいからあなたも買って使い始めればすぐに慣れるよ。それまで躊躇していたことを不思議に思うようになると思う。
(あ、Vistaに言及するの忘れてた。まあいいいや)

Macを買ってAppleがつぶれたらどうするの、1社しか提供してないのは不安だよ

ハードウェアを1社しか提供していないから多様性がなくて、てやつね。はいはい。これについても少し考えてみよう。
まずAppleがつぶれるって心配してる人なんて現実にはもういない。単に言ってみただけっていう感じ。サポートのサステナビリティとかは今後も気にする必要がない。だからこの件は解決、というか問題なし。
さて、PC(Windowsマシン)を作って売ってる会社は確かにたくさんある。その中から値段とか性能とかデザインとかもろもろを考慮してどれかを選ぶ。でもそのPC間の違いってどんなものだろう。同じアーキテクチャで同じCPUとチップセットで、キーボードもマウスも少数のメーカからのOEMで、っていうのがほとんどだ。だからそれほど多様な選択肢がもともとあるというわけじゃない。もちろん値段とか性能とかデザインとかいろいろな要素を考えて選んでいると思うけど、根本的には選択の範囲はそう広くないのだ。ついでに、デザインで選ぶならMacがいちばんいいことは明らかだ
そして、世の中のコンピュータはまだまだ大半がPCだ。むしろMacを選んだ方が、コンピュータ業界全体としての多様性を保っていることになるというふうにも考えられる。
競争が起こらないから価格が高止まりしやすい、PCは安い(ものもある)という主張もよくきくけど、同じ世代の機種同士で比較した場合、Macは決して高くない。本当に高止まりして、Macユーザは女房子供を質に入れながらひーひー言って新機種を買わなきゃいけないっていうならそれは問題だけど、普通のメーカー製PCと同程度かもしくは安いんだから、Appleが価格を決めていても問題はないだろう。そしていまやMacはハードウェアの構成要素はPCとそんなに変わらないから、一社だけとんでもない値段をつけるなんていうこともやりにくいはずだ。この先だってひどい価格差は出来ないと思う。

Macって音楽とか映像やってる人向けでしょ

これは流石に最近は少なくなった誤解だけど、でもたまに聞くことがある。
たしかに音楽や映像のプロフェッショナルでMac使ってる人は多いよ。でもそれ専用というわけじゃない。もちろんMacにはプロ・アマ問わず映像や音楽を作り出すためのクリエイティヴな道具がたくさん用意されている。特にiLifeMacを買った人なら誰でもそういったものを作り出すことができる、とても素晴しい道具だ。
でもそれだけじゃないのだ。特にその分野に関わりがない人でも有効に使うことができるし、むしろそういったクリエイティブ系の人たちよりももっともっとMacに向いている人たちがいる。中でもここでは特に私がよく知っているタイプの人たちに焦点をあてよう。それはプログラマだ。
そう、いまやMacプログラマ向けのコンピュータなのだ。Macは最も簡単にセットアップできて最もたくさんのインストール数を持っているUnix環境だ。最初から開発環境がついてくる。これに関する細かい去年も書いたのでここでは省略するけど、あれからもますますプログラマMacを買ってバリバリ使いまくってる事例は増えている。そしてこの日記を読んでいる人はみんななんらかの意味でプログラマだと思うから、あなたたちは全員が潜在的Macユーザだ。

MacじゃなくてもUnixは使えるよ

Unixの話が出たところでこちら。プログラマからよく聞くやつだけど、これもMacを買わない理由にはならない。
WebプログラマUnix環境が有効なのは認めてもらえると思うけど、そうするとMacじゃなくてもLinuxFreeBSDを普通のPCに入れて使えばいいじゃないかって言われる。またはCygwinとかcoLinuxとかをいいっていう人や、VMWareとかVirtual PCとかを使ってるという人や。その人たちはUnix環境が必要なんだけど、Macじゃなくてもいいという。
でも、それはそうだけど、やはり標準で、買ってきたままでUnix環境が動作しているというのはメリットが大きい。なんといっても楽だから。自分で苦労してインストールしたりとか、ドライバを探してきたりとか、日本だとさらに日本語の入力方法を追求したりとか、それはそれで勉強になったり楽しかったりするかも知れないけど、Macの場合はそのへんの苦労を味わうよりも買ってきて箱を開けて電源入れたらすぐ快適な生活をたのしみましょうよ、という感じ。
それにそもそもLinuxの各種ディストリビューションがいかに進化してきたといっても、Macと同レベルまでGUIときっちり統合されていたり、内部外部問わず各種のハードウェアをサポートしてたり、っていうのはいまだ無理だよね。MacBookだと持ち運ぶときの省電力設定を細やかに決めて、それに合わせて動作を変更したりできるし、スリープはふたを閉めるだけだし、スリープからの復帰も速い。Linuxでプレゼンするときにプロジェクタに出ないというトラブルがよく報告されてるwけど、そのへんも心配ないよ*2
ここで、ハードウェアが均質に整えられていることが重要になってくる。AppleMacでは確実にMac OS Xを動作させられるように常に気をつけていてくれるからね。当たり前だけど。
まあもともとUnixなんていう言葉を意識しなくても使えるようになってるし(実際知る必要はない)、知っていたら知っていたでマニアックに追求していくこともできるっていうのがMacの特徴だ。この両方を兼ね備えているものって他にあるかな。いまのところはMacだけじゃないかな。

Macってデザインがいいだけでしょ、あとはそんな変わんないよ

もちろんデザインがいいだけじゃないんだけど(それについてはこの前後とか去年のとか見て)、もしたとえデザインだけが違ったとしても、その価値は非常に大きいんだよ。それについては去年書いたことの繰り返しになっちゃうけど、道具としての価値を高めるのはデザインの力だから。かっこいいものを毎日見て触れて過ごしてると行動や思考がそれに合わせて洗練されていくのは誰でも実感としてわかるでしょ。
変なたとえかも知れないけど、ヒラギノレンダリングされた画面を毎日見て暮らしてる人は、メイリオがバランスが悪いのがひと目でわかる、というような。
それにデザインは「あとから」変更することができない。デザインは「最初から」よくなくちゃいけないんだ。ハードウェアもソフトウェアも。最初からよいものを作ろうという強い意志がないとかっこよくならない。
だからMac以外のコンピュータを買って、余裕があったらかっこよく整えていこう、というのはあんまりうまくいかない。まずMacを買って、かっこいいなーと思いながら毎日いろいろと他の部分を整えていく、というのはうまくいく。
こと類似の批判に、アンチエイリアスはCPUの無駄だからやめてくれとかいうのもある。これも同じことで、標準で、最初から、美しくレンダリングされた画面を持っていないと、あとからキレイな画面が欲しくなっても手に入らないんだ。Macをしばらくつかってキレイな日本語フォントに慣れてしまうと、いかにそれまで見ていたものが野暮ったいかに気がつく。これはCPUパワーとトレードオフしてたら永遠に気がつかないと思う。
デザインこそが本質なんだ。だからMacには買う価値がある。*3

MacはExposeがあるから最高とか言うけど、それWindowsでもできるよ

いやいや、最初から組み込まれてるのが重要なんだよ。Windowsで一見Exposeっぽいことを可能にするシェアウェアとかがあるのは知ってるけど、操作感までコピーできてるものは見たことない。こればっかりはしばらく使ってみないとわかんないと思うけど。
それに余計な設定なしに最初から使えるのがいいんだよね。類似品がいっぱいある中から選んでインストールして他のソフトウェアと衝突しないか気にしてびくびくしなきゃいけなかったりするのはダメだ。標準である機能ならそういう心配もしなくて済む。
同じことはDashboardとかSpotlightとかについても言える。めんどくさくないのは重要だよ。

Macのノート型ってみんな重いよ

このへんにくると、Macそのものの魅力はある程度認めている感じだね。あと一歩。
たしかにMacにはいわゆる「サブノート」っていうジャンルのハードウェアは用意されていない。1kgを切るようなノート型PCを欲しい人には、選択肢がないように思える。
でもちょっと待って欲しい。ちまたで手に入る1kg台やそれ以下のサブノートって、サブってつくことからもわかるようにそれだけで完結した製品じゃない。特に光学系ドライブは省略されているものがほとんどで、それを外付けのハードウェアとかもう1台別のマシンとかで補っているという利用形態になる。つまり、持ち運んで使っているときと家に帰ったときでは違う使い方をしていることになるよね。
でもMacBookはそういう製品じゃない。MacBookはそれ自体で完結したコンピュータとして使うことができて、ふだん使っていくのに必要な全てを持ち運ぶことができる。いつでもフルスペック。出先で急にDVDが見たくなっても安心だし、おばあちゃんちに遊びに行ったときにこないだあった従兄弟の結婚式を撮影したのを編集したDVDを持っていって一緒に見ていたら、たまたま別のお客さんも訪ねてきて盛り上がっちゃって自分にも1枚送ってくれよ、なんて言われたときもMacBookならその場でもう1枚作って渡すことができるね。ついでにiMovieiDVD使って今日は来られなかった叔父さんのためにちょっとしたメッセージを書き加えたりなんかもして。
何の話してたんだっけ。ともかく、それさえあれば自分のやってることはなんでも出来るっていう環境を常に持ち運べるっていうのは非常に心強い。この安心感は体験してみるとわかるけど、それが可能になるんだからある程度の重さなんかは問題にならないよ。それにポータブル型の宿命としてたまに手から落としたりとかどこかにぶつけたりとかしてしまうかも知れないから、そういうのに耐えられるようなある程度の強度も持っていなくちゃいけない。そのためにだったら多少重くなってしまうのは仕方ないしむしろわずかな軽量化のためにすぐ壊れそうに見えたりするとすごく不安だ。そこがやりたいことがなんでもできる自分のオフィスなわけだから。それにMacBookなら飼ってるネコの鉤状になってるしっぽが電源ケーブルをひっかけたりしても壊れない、ってこれは重さとは関係なかった。

Macはいいと思うけど、MacBookトラックパッドが嫌なんだよね

これもThinkPadでプレゼンやろうとしてディスプレイ出力のトラブルにあう確率が高いことで有名な日本有数のハッカー*4を筆頭にしてよく言われるけど、最近も別の記事で書いたように実際はそんなに問題にならない。
もしあなたがこれまでに、他社のノート型PCのトラックパッドを触って使いにくいと思ってるけどMacのは使ったことがない、という状態なら、Macトラックパッドなら慣れることができる(慣れてしまう)かも知れない。実際、ThinkPadの赤いポッチ至上主義者だったのに1週間から10日くらい経ったら慣れてしまったという報告もあるし。もしこれだけが障害なんだったら、1週間かそこらの投資でその他のメリットを全て享受できるわけだから、分の悪い話ではないと思う。
そしてこれも前の記事で書いたけど、いまやトラックパッドには2本指スクロールという他にはない積極的な利点がある。これはThinkPadのぐりぐりではどんなドライバ書いても実現できない。2本指でぐりぐりしてるところを検出できないし、できたとしてもやりにくいよ。:-p
類似の批判でこれも最近はあんまり聞かなくなったけど、Macはマウスが1ボタンだから嫌だというものがある。これも幸か不幸か最近は据え置き型のMacを買ったら付いてくるのは全てMighty Mouseになっちゃって、1ボタンどころか4ボタンになってしまった。よって自動的に解決。ただし私はビジュアル的にかわいいので1ボタンのワイヤレスのやつをいまだに使ってるけど。
そう、どうしてもトラックパッドがダメな人には、最後はマウスを持ち歩くという選択肢もあるよね。最近Mac買って長時間ならマウスと言ってる人もいるし。

MacじゃなくてWindowsでもiPodは使えるよ

この項、あとで書く

Mac、最近みんな使ってるからやだよ

こんな理由を聞くようになったっていうのは、それだけMacが流行ってきたってことで、よろこばしいことではあるよね。たとえその人が買わなくても。でもだからといってせっかくリーチしてるお客さんを逃すのももったいないからやっぱり買ってもらおう。
だいたいこんなこと言うってことはMacにそれなりの、いや強烈な魅力を感じてくれてはいるんだよね。いろいろなルートでMacのことは知ってくれてて、利用シーンとかも想像できてるわけ。しかも、みんなが使ってるのが目につくってことは、その人のまわりのコミュニティで使っている人がたくさんいるってことで、つまり自分だけじゃなく周辺の人まで含めたコンピュータの利用用途にMacがとてもフィットしているっていうことだ。そういった環境に身を置いておきながら、あえて「買わない」ことを選ぶのは効率性からいってもとても好ましくない。その人が凄腕ハッカーだったらなおさら人類全体の損失になる。だからこの場合はまわりにいる人もがんばってほしい。
さて、Macはたしかに一部のコミュニティに認知されてきたから、そこにいる人みんなMacっていうのもたまに見かける光景になった。その中で自分も同じハードウェアを買うのは、人と違うことをしたい場合はなんかシャクなのも気持ちはわかる。特にMacはハードウェアの選択肢が多いわけじゃないからポータブルが欲しかったら4つの機種から選ばなきゃいけなくて、どうしたって誰かとはカブる。
でもねでもね、Macは持ってればいいものじゃなくて、持った上でなにかを実現するものだ。そして、その使い方というのはそれこそ千差万別、ユーザの数だけ使い方がある。それにMacは、特にプログラマにはその想像力を最大限受け止めてくれるものだ。洗練されたデザインと常に貪欲に進化するソフトウェアのフレームワークによって、プログラマの思考を加速してくれる。みんなと同じMacという入れ物の制約を受け入れることによって、より可能性を広げてる人がたくさんいる。Constraints are Liberating! だ。Mac is the Straight Jacket for Your Mind!! なんだよ。これで十分じゃない?


あと、これはおまけ。

*1:なんたってアフィリエイトは不調というか、アクセス数からすると無きに等しい感じだったんだけどみんな別ルートで買ってくれたんだよねそうだよね

*2:DVIから変換するアダプタを忘れてきちゃって誰かから借りなきゃいけなくなる人はたまにいるけど

*3:これは私がかつてNeXTを買った理由でもあるし、振り返ってみてもあのときNeXTに触れたのはその後の自分の通った道を考えても大正解だった

*4:ごめんなさいごめんなさい