星野智幸『植物診断室』

植物診断室

植物診断室

フィクション強化年間につき。これは一種のジャケ買いでしょうか。芥川賞候補作のオビがかかってる。
中堅どころの商社に勤め、高層マンションに住む独身貴族の水鳥寛樹はマンションではベランダでのび放題にしてた草がジャングルになっていて、そのうちアイビーが壁を埋めつくす様を妄想する。彼はそのジャングルと関係あるのかないのか、なぜか自分が植物になるのを体験するという変なセラピーに通っている。そんな水鳥が、離婚が成立したばかりのある母子家庭から、父親ではない大人の男性として自分の息子に会ってくれないかという依頼を受ける。実は水鳥は妹夫婦の子どもの姪っこに妙に懐かれていて、子供にだけはやけにモテると実家の母親に嫌みを言われるくらい。で、その母親は妹の夫の同僚でその噂を聞きつけてということなのだが..。
あっけなく読み終わってしまうが、とてもよかった。屈折した設定のように思わせながら、読んでいくと意外に良識的というか、内面がわりととんでもないことになってる水鳥がすごくまともに感じるようになっていく。これはいいものだー。星野智幸ははじめてだったが、ほかも読んでみようかなあと思った。