マーク・ブキャナン『複雑な世界、単純な法則』

複雑な世界、単純な法則  ネットワーク科学の最前線

複雑な世界、単純な法則 ネットワーク科学の最前線

邦訳が出てすぐ買ったので、だいたい2年越しくらいの積ん読本です。こうなってしまうと時間と勢いのあるときじゃないと読めないのでえいやっと。この分野では、バラバシの『新ネットワーク思考』は読んでたけどはてなでこの日記を書き始めるより前なので記録がない。手元のメモによると、2003年3月3日に読んでいるらしい。ダンカン・ワッツの『スモールワールド・ネットワーク』は買ったけどまだ読んでない。スティーブン・ジョンソン『創発』は2004年3月に読んでた。いまはすごくたくさんの人が研究してる分野です。あんまり詳しくないんだけど、日本でも安田雪さんらのmixiを題材にしたやつとかがキャッチーなので見たことある人もいるでしょう。
さて、この本はさすがに読み応えありました。前半でワッツ&ストロガッツの論文でこの分野が注目されたことの紹介から入りって基礎的なネットワーク構造を解説、ネットワークに非常に単純なルールをいくつか付加するだけでスモールワールド的性質を持たせることを説明して、ネットワークの成長のさせ方のひとつとしてバラバシも出てくる。面白さが加速するのは中盤以降で、これらの理論を下敷きにしてわかってきたいろいろな研究の成果をブラウズしてます。もともとの研究の発端の人間関係から始まって航空ルートとかインターネットとか脳神経細胞とか河川の流域面積とか生態系とかAIDSの感染経路とかお金の貯まり方とかその他もろもろ。とにかくありとあらゆるものが対象で、読んでるとこれで考えられないものなんかないんじゃないの? とかいう気分になる。
とはいえ、邦訳の出版から2年近く、原著からは3年以上も経ってるのでその後の展開とかが気になるし、去年yucoさんが、6次の隔たりの説明としてよく引き合いに出されるミルグラムの実験には根拠がないということを書いていてくれてこれがとても面白かったりしたのでこのあたりの現在の発展も気になる。このブキャナンの本なんかでは人間関係のネットワークより他の例の方が面白いし、理論的な構造が社会の様々な場所にあらわれて説明に使えるということが本の訴えてるところなんだけど、人間関係のネットワークに関する現在の話はそれはそれで興味あるよね。などなど。やはりいま読むといろいろと気になるところもあるのだった。次は何を読めばいいのだろうか。