2006年に読んだ本ベスト7

まとめ系の記事が流行ってるので便乗して(ちなみに去年のベストはここにあります)。今年はまだ終わってないけどこのあと2日間で大きく塗りかわるようなこともないだろうし。この日記で2006年中に読書記録を書いた本は今日までで93冊ありました。4日に1冊くらいのペースですか。昔に比べると読む量もスピードもなくなってきたなあ。買う量は意識的に下げてるんですが。その中で個人的な今年のベストを挙げるとしたらこんな感じかな。著者とタイトル、その後はこの日記で取り上げた日。

梅田望夫ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる』(id:ogijun:20060204:p3)

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

このあとに続いた『シリコンバレー精神』も含め『ウェブ人間論』に至るまで、やはり今年の印象はこれで始まってこれで終わったような気がします。この本(や著者の梅田さん)は日本のエスタブリッシュメントをはじめとしたこれまであまりネットの世界になじみがない方々に、インターネットやGoogleのなんたるかを広めた本(人)として取り上げられることが多いように思いますが、私見では(自分を含め)いま30才前後やそれよりも若い人たちへの影響力が絶大だと思う。直接間接を問わず梅田さんの影響で自分のキャリアパスを見直した人はすごくたくさんいるんじゃないでしょうか。これが渡辺千賀さんの『ヒューマン2.0』なんかとも絡まって、今後もっと大きい流れになってくる予感がします。自分の来年にも大きく影響しそう。そういえば今年は知り合いが次から次へと転職していった年でもありました。

Chad Fowler『My Job Went To India オフショア時代のソフトウェア開発者サバイバルガイド』(id:ogijun:20061016:p1)

My Job Went To India オフショア時代のソフトウェア開発者サバイバルガイド

My Job Went To India オフショア時代のソフトウェア開発者サバイバルガイド

プログラマ、エンジニアのキャリアとは何か? ということを非常に真摯に問い直した本です。特に若い人に読んでほしいし、自分もたまに読み返して襟を正したいと思います。
10月に著者のChad本人に会ったときに、この邦訳版にサインを入れてもらいました。その時点では急いで読んだだけだったんだけど、その後パラパラと再読する度にChadのこの本に込めた思いがにじみ出してくるような気がして、もっと突っ込んでこの本の内容について話しておきたかったなあ、と思ってます。来年日本に来るらしいのでそれまでに英語で話せるように練習しとかなきゃ。
Chadには『Rails Recipes』という著書もあって、その邦訳『Railsレシピ』も(翻訳の品質に一抹の不安はありますが)今年後半に出版されました。

今野浩金融工学20年』(id:ogijun:20060122:p1)

金融工学20年?20世紀エンジニアの冒険

金融工学20年?20世紀エンジニアの冒険

詳しくは元記事の日のやや興奮気味で書いた内容を参照してください。こういう「研究の内幕モノ」はもとから好きなジャンルではあるけれど、それにしてもこれはすごい勢いで読ませます。あと、理系研究者による文系学問(とされている)である金融工学への貢献の歴史で、要するにこれは(やや飛躍するが)理系の復権の物語なのだなーと考えると、私が気に入ったのもわかるような気がします。自分のことながら。同じく今年読んだ、同じ著者の『役に立つ一次式』もオススメです。そういえばこのあとは本出てないのかな。

マイケル・コロスト著, 椿正晴訳『サイボーグとして生きる』(id:ogijun:20060903:p1)

サイボーグとして生きる

サイボーグとして生きる

今年に入って何回か今後「機械によって拡張された人間」は有りか無しか、みたいな問いを耳にする機会がありましたが、知覚でそれをやっている人が実際に自分を対象にして書いた本で、しかも書き口も面白くて他に類を見ない本でした。↑に書いた問いはもちろん医療としてそういったことをやっている人(心臓ペースメーカーとか)を否定するものではないけど、治療のために機械やコンピュータを使うというのはすぐに違う方向に転用されることが予想される。↓の本なんかと合わせていろいろ考えてしまう。

ラメズ・ナム著, 西尾香苗訳『超人類へ! バイオとサイボーグ技術がひらく衝撃の近未来社会』(id:ogijun:20061125:p1)

超人類へ! バイオとサイボーグ技術がひらく衝撃の近未来社会

超人類へ! バイオとサイボーグ技術がひらく衝撃の近未来社会

衝撃的。人間の暮しを含めたこの世界をよくしたいという方向性はネットの発展と同じで、梅田さんの本で書かれていた、Googleが地理的な障壁を飛び越してしまう、というのと同じような意識ですごいジャンプを真剣に考えていて、しかもこっちは常に現実の世界とリンクし続けている。壮大な妄想だけど惹きつけられる。まじめに検討しないといけないと思うし、自分のやりたいことともリンクしてます。

白田秀彰『インターネットの法と慣習 かなり奇妙な法学入門』(id:ogijun:20061003:p1)

これも面白かったなあ。この本はインターネットを撒き餌にして法を語ってしまったわけですが、逆にいまネット上で起こっているいろいろな法的な問題は法というものを根本から考えなおさないとわからないところがある、ということなのかと思われる。その後もいろいろな事件や判決があるにつれ。
新書ブームのおかげでこういうのが読めるとなるとありがたいような単価の安さがもったいないような。この他にもソフトバンク新書はいろいろとアタリがあってよかったです。最初に話を聞いたときはどうなることかと思いましたが。

ピーターモービル著, 浅野紀予訳『アンビエント・ファインダビリティ』(id:ogijun:20060505:p1)

アンビエント・ファインダビリティ ―ウェブ、検索、そしてコミュニケーションをめぐる旅

アンビエント・ファインダビリティ ―ウェブ、検索、そしてコミュニケーションをめぐる旅

恋人に贈りたくなるほどすばらしい本だと言ってる人がいますが、本当にその通りで、読むだけでうっとりしてきます。自分があと10才若くて、こんな本を誰かに贈られたら間違いなく惚れる。
大量に挙げられている参考文献を好きなだけたぐってむさぼり読むことが許されたらどんなにいいだろう。そんな時間を過ごしてみたい..。ちなみに実際に自分が学部の学生だったころにこんな感じで思いっきり影響された本が西垣通さんの『デジタル・ナルシス』でした。


これらの本は再読するだろうし、実際既に何回か読んだのもある。ベスト5とか10とかにしたかったんだけどうまくおさまりませんでした。来年はどれくらい読めるかなあ。良い本との出会いがあるといいなと思うし、今年買った本で読めなかったやつも手をつけなきゃいけないし、まあたのしみであります。

参考

http://astore.amazon.co.jp/ogijun-hatena-22 (Amazonのインスタントストア)