梅田望夫, 平野啓一郎『ウェブ人間論』

ウェブ人間論 (新潮新書)

ウェブ人間論 (新潮新書)

やっと入手して読みました。もちろんもらってないです自腹で買いましたです*1。そして一気に読む。
なんていうか、もう会話の一行一行、それも両方の言ってることの一言一言になにか言いたくなってくる、という思いを抱きながらも、とにかく読み進めていた。この感覚はなにかに似ているな、と思ったんだけど、それはいったいなにかと考えてみたら飲み会で人がしゃべってるのを聞いててなにか自分もひとこと言いたいのだけど話を主導してる人の意見が面白いので聞き入ってしまうため、流れに乗れなくてずっとだまって聞き役になってる、というときの感覚なのだった。なんだそれは。
対談している2人は、梅田さんはやや年上だけど我々のような人にはもとから多大な影響を与えてくれている人で元からこっち側な感じ、対する平野さんは仕事やふだんのフィールドではあちら側だけど実は同世代(同年生まれ)で、時代性ではこちら側、この取り合わせで対論しているとその両方の主張にちょっとずつ賛成・共感してちょっとずつ引っかかってひと言はさみたくなる。ちょっと僭越な、というかちゃっかりした言い方をすると、自分が2人いて対談してるかのような気になることがあった。もちろんそれは錯覚で、そうやって読み手の琴線に触れることができるのが2人の技量なのであるが。てな感じで面白かったけど、延べ8時間以上にわたったという対談の、本に入れるにあたって捨てられた部分も気になってしょうがない。

前に『シリコンバレー精神』の文庫化出版について「あっさり文庫化権を筑摩書房にあげちゃう新潮社はふとっぱら」ということを書いたけど、やっぱりアレはふとっぱらだったわけじゃなくて単にマヌケ(失礼)だったのかという気がする。梅田さんはフォーサイトでもずっと連載してたわけだし。この本はそのリベンジみたいな感じですかね。対談の中で『シリコンバレー精神』(というかその前の単行本『シリコンバレーは私をどう変えたか』)の中の、Linuxが資本主義に飲み込まれる話が出てくるんだけど、梅田さんはそう書いたことを「間違っていた」と語っている。そこでオープンソースは負けたと思ったけどもっとしぶとかったと。そう梅田さん自身が否定してしまっているんだけど、それについては私には当時の梅田さんの方が正しいと思っている。これはいずれきちんと項を改めて書かなきゃいけないなあ。

*1:そいえば『ウェブ進化論』も『シリコンバレー精神』もご厚意で筑摩書房さんから頂いたのでした。