菅谷義博『80対20の法則を覆す ロングテールの法則』は買わなくていい

GW薄い本読書シリーズ。でもこれはイマイチ。

80対20の法則を覆す ロングテールの法則

80対20の法則を覆す ロングテールの法則

書名を見て読んでみようかと思った人は、そんなに期待しないほうがいいかも。ロングテールという言葉を借りてきただけで、単にマーケティングとセールスのぬるいノウハウ本のような感じ。ダイレクトマーケティングのかけ方とかSEO/SEMなんかを中途半端に詳しく説明している。(が、その分野の本としてそんなにいいものとも思えない。私は不案内なのでわからんけど)
たとえば、サービスのメニューを1つ2つ増やしてシナジーを上げることを「サービスのロングテール化」と呼んでいて、どうみてもただの水平展開です本当にありがとうございました。あと、パレートの法則だと2割の商品が8割の売上げを上げるはずであるが、この会社では2割の商品が4割の売上げしか上げていない、よってロングテールである、とか。そもそもパレートの法則の「法則」ってそうじゃないだろとか(著者が間違ってるかはともかく説明が悪い)、40%しかないからロングテール、とかいうあたりはそういう問題じゃないだろというか根本的にわかってんだろうかと首をかしげたくなる。
思うに、本書はおそらく最初はマーケティングやセールスの一般書として企画されたんだと推測される。それが、本の中で紹介される言葉のひとつだった「ロングテール」がネット界隈だけじゃなくて一般ビジネス書の読者層にもリーチしてきたから、途中で路線変更してこっちをタイトルにでーんとかましてみました、というような。中途半端にDMの入門書みたいな記述が残ってるし(メルマガを出せ、顧客識別情報を使え等)、巻末の事例紹介も、要するにインターネットを使ってダイレクトマーケティングに成功してますよ、というところで完結してる話ばかりで、ロングテールっぽいと言えそうなのは1社だけ、それも上に書いたように(4割だから〜)数字を紹介してるだけで分析等は一切やってない。
そういう本にこのタイトルを、しかもChris Andersonの本が邦訳のみならず原書ですらまだ出版されていないのに、それより先にこういった(ミスリーディンな)タイトルを付けて(一応、副題の扱いだけど表紙にはそっちの方をでかでかと書いて)出版してしまうという行為にこめられた意思はどうも許し難いもののように感じられる。どうもここまで書いてきたら、最初に「期待しないほうがいい」と書いたのがすごくおだやかな表現のように思えてきた。もっとはっきり書こう。オススメできない。てゆーか絶対買うな!! こんな本を買うより本家の出版を待ってください。邦訳もたぶんどこかが権利取ってると思うのでそんなに待たされずに出るでしょ。あるいは待ち切れない人も本家のblogやその日本語版を読んでいましょう。