今野浩『役に立つ一次式』

本邦初、応用数学ドキュメンタリー。むっちゃすごい。数学科あるいはそれに準ずる数理科学専攻の学生さん、それに数学科志望の受験生諸君、すぐ読め! 今読め!
整数計画法という分野の誕生と栄枯整数、じゃないや盛衰、最近の(再)発展を日本の第一人者たる研究者がめっちゃ軽快な筆致で語ります。ノーベル賞級の超特級の学者がばんばん登場して物語を動かしていくのでそれだけでむちゃエキサイティング。
さらにここで、例えば同じ数学ドキュメンタリである『素数の音楽』や『フェルマーの最終定理』と比べてみると、いわゆる応用数学」であるこの分野がこうやって物語になってるのは非常にめずらしく、というよりも(本書でも指摘されていますが)数学科の常識としてどうしても応用分野があるということは低く見られがちなことも多いので、その意味でもとても貴重な内容です。正直なところ、整数計画法がこんなにドラマに富んで面白い分野だとは予想していませんでした。
ついでに知ってる(お世話になった)研究者も何人か出てくるので同窓の皆様にも楽しめると思います。一例を挙げると、松井知己さんを「この人は1988年のワールドカップ(国際シンポジウム)から活躍しはじめた若手の研究者で」などと書いてあったりする。
というわけで超オススメです。大当たりでした。