野口悠紀雄『ゴールドラッシュの「超」ビジネスモデル』
- 作者: 野口悠紀雄
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/09/21
- メディア: 単行本
- 購入: 12人 クリック: 87回
- この商品を含むブログ (22件) を見る
ITがゴールドラッシュにたとえられることはよくるのだけれど、両者の間にはそのよくあるたとえよりもはるかに密接な関係がある。この2つの出来事の関係を端的に表わしているのはスタンフォード大学であり、スタンフォードにシリコンバレーの歴史が凝縮されている、というようなことがこの本のテーマです。
前半で19世紀のカリフォルニアを舞台として起きた本物のゴールドラッシュについてさまざまなドラマを解説しています。さまざまな登場人物がいるのだけれど、直接金を採集した人が財をなしたわけではない。例えば、実際に自分の農場から金が出た人はそれがきっかけで破産してしまいます。それに対して、ゴールドラッシュで財をなした人々というのはいったいどういったことをやっていたのか、というのも解説します。このへん、細かいこと知らないので面白かった。
後半で、この本物ゴールドラッシュとITのゴールドラッシュは、単に大金持ちになった人がたくさんいたということだけではとどまらない関係が見て取れるということから現在のカリフォルニアやシリコンバレーで起こっている経済現象について解説、ここではNetscape、Cisco、Sunなど我々にはおなじみの企業がたくさん登場します。
本物ゴールドラッシュの時代に鉄道王として君臨したリーランドスタンフォードが、当時は僻地でしかなかったカリフォルニアにスタンフォード大学を設立します。そのスタンフォード大学が、シリコンバレーを生み、ITを生んでいくという形で2つの時代を繋いでいるということが語られています。著者は去年1年間をスタンフォードで客員研究員として過ごしているので*1、その間にこのことを強く意識したのでしょう。わりと感動。
*1:その滞在中の話などが別の本にまとめられてます