武田邦彦著『リサイクル幻想』文春新書

リサイクル幻想 (文春新書)

リサイクル幻想 (文春新書)

素晴しいいいい本だった。みんな読め。出版は2000年ですがなんで今まで読んでなかったのか。括弧つきの「リサイクル」をしてはいけない、ということをものすごく平易かつ丁寧に議論を積み重ねて説明していく。材料力学や有機化学にまで遡って論考すると、経済効率と環境への優しさという一見背反するように見える事象がきれいにつながりこれらを別モノととらえている議論に意味がないことがわかる。
と同時に本書に感情的な反発がたくさん出たであろうことも予想出来る。エネルギー保存則、熱力学第2法則という当り前の前提がいかに軽んじられているか、というのは考えるとかなり憂鬱になるんだけどひるんじゃいけないという気分になる本。ひとつひとつ論破していかなきゃいけない。
例えばaskulでは再生紙よりも普通紙の方が安いんだけど、この安いということの意味を考えてみると、原材料費・加工費・運送費などの様々な費用が積み重ねられたエネルギーの差を反映していて、そのエネルギーはもとはと言えば太陽光が形を変えて自然環境中に蓄積したものを消費して得られるものなのであるわけで、価格が安いというのはこの蓄積を使用してエントロピーが増大する割合が小さいということを意味することになる。つまり「値段が高い」再生紙環境負荷も高いのは当り前。他にも蓄積型エネルギーと生産型(本書では給料型)エネルギーの違いなどの本質的な差があって、実際に再生紙を利用することにはほとんど意味がない。というよりは害があるから止めた方がいい。ではどうすれば良いかというと、燃やしてその熱量で発電する。リサイクル施設より発電所作れ。という主張をしている。